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歪んだ梁の家 – 不動産屋「業深」猟奇譚

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不動産×ホラー小説
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猫はムネに 手をあてている

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◇年商15億円以上、創業30年中堅企業を支える不動産営業事務(歴5年)
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登場人物

鷲沼
鷲沼

ルポライター 鷺沼探偵

フリーのルポライター。三流雑誌の依頼で曰く付きの物件を取材する日々を送る。生活は楽ではない様子が窺える。

黒田
黒田

不動産屋「業深」社長 黒田

太った体に安物のスーツを着こなし、常に人を食ったような笑みを浮かべている。目は獲物を探す蛇のように光っており、悪徳な雰囲気を漂わせている。

淀んだ空気、怪しい不動産屋との出会い

大阪の裏路地。梅雨明け前の生暖かい空気は重く、腐敗臭と土埃が混じり、じめじめとした陰鬱な雰囲気が漂う。

私はフリーライター、鷺沼わしぬま探偵。三流雑誌の依頼で、曰く付きの物件を取材し、わずかな原稿料で生活している。

今日のターゲットは、地元で「祟られている」と噂される古い木造二階建ての廃屋だ。


紹介してくれたのは、悪徳不動産屋として有名な「業深(ごうふかし)」の社長、黒田。

太った体に安物のスーツを着こなし、常に人を食ったような笑みを浮かべている。その目は、獲物を探す蛇のように光っていた。

黒田
黒田

いやあ、鷺沼さん、あんたみたいな変わり者にはもってこいの物件ですよ。出るらしいですからねえ

足を踏み入れた廃屋の異様な雰囲気

黒田は脂ぎった指で、古びた鍵束から錆びた鍵を取り出した。軋む音と共に開かれた門の向こうは、昼間なのに薄暗い異様な空間だった。

伸び放題の雑草、苔むした石灯籠、そして不自然に歪んだ物干し竿。足を踏み入れる前から、この家がただごとではないと感じた。

黒田
黒田

築年数はもう誰も覚えてないでしょうね。前の住人は…確か、夜逃げ同然で出て行ったとか。詳しいことは知りませんけど



黒田の言葉は軽く、どこか楽しそうだ。彼の目は、これから私が体験するであろう恐怖を面白がっているように見えた。


玄関の扉を開けると、むっとしたカビ臭さと埃の匂いが鼻をついた。薄暗い廊下には蜘蛛の巣が張り、歩くたびに床がギシリと音を立てる。壁の壁紙は剥がれかけ、下から黒いシミが覗いている。

黒田
黒田

どうっすか?この雰囲気、最高でしょう?鳥肌が立ちません?


黒田は薄気味悪い笑みを浮かべ、懐中電灯で室内を照らした。光が当たるたび、空気がざわめくように感じた。

歪んだ梁と語られる過去


一階のリビングに入ると、天井の太い梁が異様な形に歪んでいるのが目に飛び込んできた。まるで何かに押し潰されたように、大きく湾曲していた。表面は黒ずみ、ひび割れが走っている。

鷲沼
鷲沼

「このはりは…?」

黒田
黒田

ああ、あれですか。この家で首を吊った男がいてね…その時の重さでこうなったとか。

まあ、噂ですけど


その言葉で、歪んだ梁は単なる損傷ではなく、そこで命が絶たれた者の怨念が形になったように思えた。黒ずんだ表面は、乾いた血の色に見えた。

軋む階段、二階の暗がり

二階へ続く階段は腐りかけており、足を踏み入れるたびに大きく傾いた。手すりは冷たくヌメり、まるで蛇のようだ。

一段上がるごとに、奥からすすり泣くような声が聞こえる気がした。


二階の廊下は真っ暗だった。窓は埃と蜘蛛の巣で完全に覆われている。壁には引っ掻き傷のようなものが無数に走り、乾いた血痕のようなものが点々と残っていた。

子供の描いた異様な絵


廊下の突き当たりの部屋の扉を開けると、強烈な腐臭が鼻を突いた。朽ち果てたベッドのフレームには体液のようなものがこびり付き、マットレスはシミだらけだ。

壁には、子供が描いたと思われる絵が残っていたが、それはおぞましいものだった。黒いクレヨンで塗りつぶされた紙に、大きな目だけの顔がいくつも描かれ、こちらを睨んでいるように見えた。

鷲沼
鷲沼

「これは…」


黒田
黒田

ああ、前の住人の子供が描いたとか。才能ありますねえ、ハハハ!


しかし、それは子供の落書きではなく、この家に取り憑いた悪霊の叫びのように感じた。

呪われた祭壇のある部屋


廊下の反対側の部屋を開けると、そこは異様な空間だった。人間の骨の様なものが積み上げられた祭壇があり、周りには腐った内臓や髪の毛の入った瓶、黒く濁った液体が入った容器などが並んでいる。

壁には血文字のような記号が書き殴られ、異様な臭いが充満していた。

鷲沼
鷲沼

これは一体…?



黒田は目を血走らせて囁いた。

黒田
黒田

ああ、前の住人が熱心に…まあ、そういう儀式をされていたみたいですね。本格的でしょう?


これは常軌を逸した人間の狂気の痕跡だ。この家で、どんな恐ろしい儀式が行われていたのだろうか。

囁かれる噂、老婆の語る真実


取材を進めるうちに、この家に関する恐ろしい噂を耳にするようになった。

すすり泣き声だけでなく、壁を叩く音、引きずる音、獣のようなうめき声。誰もいない二階の足音、子供の嬌声。そして、この家に関わった人間は精神を病んだり、事故に遭ったりするという。


近所の老婆は顔面蒼白で語った。

あの家は…生きているんだよ。人間の悪い感情を吸い取って、どんどん禍々しくなるんだ。

昔、若い夫婦が住んでてね…旦那が奥さんを刺し殺して、自分も首を吊ったんだ。子供は…どこへ行ったか誰も知らない…


老婆は裏庭を指さした。

井戸だよ…底なし沼だ。何かを吸い込むんだ…

夜になると、中から赤ん坊の泣き声が聞こえるって…


老婆の話を聞き、この家の異様な雰囲気と数々の噂は、ここで繰り返された人間の悪意と絶望が生み出したものだと確信した。

歪んだはりは、そこで断たれた命の重みを今も支えている。

業深の言葉、不動産業界の闇


後日、黒田を問い詰めた。彼は目を泳がせながら言った。

黒田
黒田

まあ…そういう曰く付きの物件だってことは知っていましたよ。でも、告知すれば問題ないですから。この値段なら、多少のことは…ねえ?


黒田の言葉は、金のためなら人の不幸も顧みない、不動産業界の闇を象徴している。

彼は、この家に巣食う悪霊の存在を知りながら、私に売りつけようとしていたのだ。

逃げるように立ち去る、残る家の記憶


結局、私はこの家から逃げるように立ち去った。歪んだ梁の下で聞こえるであろう怨嗟の声、そして赤ん坊の泣き声を想像するだけで、精神が限界だった。


大阪のじめじめとした夜空の下、私は冷や汗を流しながら家路を急いだ。

背後には、歪んだはりの家が、まるで生きている悪意のように静かに佇んでいる。あの家で繰り返された惨劇は、今も癒えることなく残り、新たな被害者 と、黒田のような悪徳業者を待ち続けているのだ。


このおぞましい体験は、私の魂に深く刻まれた。

二度と、あのような呪われた場所には近づきたくない。そう強く思った夜だった。

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